着物から足を洗った友達

以前、呉服屋に勤めていた友人のお話しです。

彼女は今は別のお仕事をしていますが、一時期、着物の販売の仕事をしていました。着物が好きだったからその仕事に就いた、と本人は言っていました。しかし、その仕事はとても大変だったそうです。

彼女いわく、とにかくノルマをこなすのが大変で、毎日毎日売りつける事しか考えていなかったそうです。季節ものや学校行事の関係でいろいろな着物が大量に入荷するのです。お店の販売能力や、お客様の好みの傾向やご要望などは一切無視した、100%会社都合。

しかもその月のノルマを達成しないと、自腹を切って買い取りしないといけない。
そのため、当時彼女は誰これ構わず着物を売りつける事で有名でした。

親兄弟、親戚にはすでに売りつけたので、後は友人知人に頼るしかなくなり、強引な販売でトラブルばかり起こしていました。うちにも昼夜を問わず電話をかけてくるようになり、本当に辟易しました。悪い人ではないのですが、そういうわけでだんだん疎遠になっていきました。

とはいえ、あまりに気の毒だったので彼女が働く呉服店で以前、買い物をした事があります。その時は白足袋が必要だったので、それだけを買い求めに行ったのですが、対応してくださったお店の人の様子が変でした。予算や用途をなどを伝えるのですが、それを無視して少しでも高いものを勧めます。

また、足袋だけだと何度も言っているのに、高い着物や帯などを進めてきて、断ってもまた勧めてくるのです。

あの手この手でその気にさせようとしたいらしく、嘘がバレバレの気持ち悪いほめ方で、とにかく気分をよくして財布を開かせようとしてきます。

延々と一方的にしゃべりまくり、そのうち「どうしてこの品物の良さがわからないのですか」とヒステリックに叫んでキレました。

さすがに怖くなりました。

買うつもりだった足袋を放り出して逃げました。別のお店で無事に買い物を済ませましたが、あの異様な雰囲気は忘れようとしても忘れられません。

結局、会社が倒産してしまい、彼女は別の仕事をしています。しばらくしてから会う機会がありましたが、ずいぶん穏やかな表情になっていて安心しました。
もちろん、もう押し売りは絶対にしないので、普通に友達として付き合っています。

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